隠しごとはナシ!
のオープンなオフィス。
これが我が社ウ チの
アイデンティティ
株式会社FABRIC TOKYO
代表取締役社長 森 雄一郎 氏
- 会社名
- 株式会社FABRIC TOKYO
- 代表取締役社長
- 森 雄一郎
- 設立
- 2012年4月6日
- 所在地
- 渋谷区千駄ヶ谷5丁目23-13 南新宿星野ビル6階
- 事業内容
- カスタムオーダーアパレルブランド「FABRIC TOKYO(別窓で開く)」の運営
- URL
- https://corp.fabric-tokyo.com/(別窓で開く)
取材日:2019年8月
※取材・撮影内容・会社情報等は取材日時点のものです。
株式会社FABRIC TOKYO(別窓で開く)は、ビジネスウェアのカスタムオーダーサービスを展開するアパレルブランド。実店舗での細かい採寸を“ファッションを通した体験リアル”として重視しながらも、“スマホからオーダーできる手軽さ”を取り入れた独自のビジネスモデルを確立。オーダースーツ界に新風を巻き起こしました。
そんなFABRIC TOKYOのオフィスには、社内コミュニケーションを活性化させる仕掛けが満載。
隠しごとナシのオープンなオフィス?独自のカルチャー?
「オフィスは経営のメッセージ」だと語る代表取締役社長の森雄一郎さんに、オフィスづくりに掛ける思いを伺いました。
インタビュー
事業拡大とともに実感した、
オフィスの重要性
まず御社の事業内容から聞かせてください。
FABRIC TOKYOのコンセプトは「Fit Your Life」。自分らしく生きるためのビジネスウェアをPCやスマホからオーダーメイドできるサービスを提供しています。お客さまには実店舗で採寸を“体験”してもらい、クラウド上にデータを保存。一度採寸データを登録すればその後は来店の必要がないので、ネットから簡単にオーダーできるんです。結構深夜の時間帯の注文が多いんですよ。ベッドに寝転びながら、生地を選んだり、袖の形を決めたり。
忙しい人にとって、時間に縛られないオーダーシステムは魅力的ですね。
ありがとうございます。若い方や忙しい方にも気軽にオーダースーツを楽しんでいただけたら嬉しいですね。
ちなみにこの事業を立ち上げたきっかけは、“服というリアル”と“IT”を融合させようというアイデアからでした。
学生時代からファッションには興味があって。当時は様々な分野でIT化が急激に進んでいる時期でしたが、ファッション業界においては圧倒的に遅れていることに気づきました。ならば、ここに商機があるのではないかと。大学卒業後に上京し、ファッションイベントプロデュース会社に就職。その後、不動産ベンチャーでの勤務を経て、2012年にマンションの一室から当社をスタートさせました。
今思うと、立ち上げ当初は色々苦労したり悩んだことも多かったですね。そんなとき、Twitterを通じてとある企業の創業者に出会って。こんな優秀な経営者のもとで修行できたら…という思いから、一大決心の末、1年間当社を休眠させて彼の事業に参画しました。わずか1年が5年に感じられるほどの濃い時間でしたね。
そこで事業開発のノウハウを学び、満を持して現在のオーダースーツ事業を立ち上げたということですね。
その通りです。1年間の修行を経て、2014年4月、前身の「LaFabrics」(現: FABRIC TOKYO)(別窓で開く)をリリースしました。と言っても当初のメンバーは私とエンジニアの2人だけ。夢中で働き事業は順調に伸びていきましたが、まだまだオフィスを持つ余裕はなくて。コワーキングスペースや他企業のオフィスの一角を間借りして、働く場所をテンポラリーに変えざるを得ませんでした。
その後、自社のオフィスを構えることになったんですね。
初めてオフィスを構えたのは、大手ベンチャーキャピタルからの出資が決まった2015年。渋谷のビルへ移転しました。ところがその後、事業成長とともに思わぬ苦労があったんです。
入居時6名だった社員は半年で倍増。2フロアに増床したものの、またすぐに手狭に。3年後には採用面接の会議室が足りなくなり、近くにサテライトオフィスを借りて。今度は新人スタッフの研修スペースが足りなくなり、コワーキングスペースを使うことに。
オフィスが足りなくなるほどの事業急成長だったとは。嬉しい悲鳴かもしれませんが…
執務スペースはいっぱいで会議室も足りないとなると、組織の全体像が見えづらくなるんですね。ある程度の規模まで企業が育ったら、組織の理念を表現する場としてもしっかりしたオフィスを構える必要があるなと実感したのがこの時期でした。
そんなとき、住友不動産さんから代々木の「南新宿星野ビル」をご提案いただいて。ほぼ即決でした。
ベンチャーの街・渋谷を離れて
代々木へ
ITベンチャーやアパレルは渋谷を好むイメージがありますが…なぜ代々木だったんですか?
まず第一に、「他社とは違う、独自のこだわりを持つ」という私たちの考え方にあります。渋谷がベンチャー企業で溢れるようになってきたら、少し距離を置く方がウチらしい。新宿だと大企業っぽすぎるし、原宿は若すぎる。その点、代々木は絶妙だったわけです。
次に大きかったのが、意外に便利だった代々木の交通アクセス。渋谷から山手線で2駅のスライドなら移転で社員の通勤が不便になる心配もない。大江戸線で六本木界隈に出られたり、中央・総武線が通っているのもすごく便利ですよね。
そして決め手は、何と言ってもビル自体の魅力ですね。三面に窓があるので、開放感がすごくて。それまでいくつかの物件を検討してきましたが、迷わずこのオフィスへの移転を決めました。
内装を拝見すると、普通のオフィスとは一味違いますよね。
オシャレで雰囲気だけのオフィスはつくりたくない。当社の組織戦略と組織文化をベースにして、戦略的にオフィスを設計しました。私たちの最大のアイデンティティ≒カルチャーである‟オープン”を表現できる空間にしたいなと。
当社は製造・小売・ITなど、いろんな業態がセットになった会社なので、 部 門 ファンクションが多いんです。業務上であまり接点のない部門同士でも、日頃の交流なくしては絶対にうまくいかない。そこで、オープンなカルチャーが浸透するような工夫をオフィスの随所に仕掛けることにしました。
具体的にはどのような工夫をされたのでしょうか?
ご覧ください。この会議室をはじめ、すべての部屋をガラス張りにしています。それと壁も一切立てていないので、あちらの受付にいらしたお客さまからもオフィスの奥まで見えるようになっているんです。まさに‟オープン”な社風のとおり、隠しごとはナシ!という(笑)
あと、社員から好評なのは、ゆったりと広いコミュニケーションスペース。みんな自席を離れてここでランチを食べるようになり、自然と交流が生まれましたね。
社内交流を促す、
多彩でオープンな仕掛けたち
フロアの一角にデモショップをつくられたんですね。
ええ。これ、「ファブリック・ウォール」と言って、スーツやシャツの布地を展示するものなんです。新人スタッフは各店舗へ配属される前に、このデモショップで1ヵ月間の研修を受けることになっています。
ちなみに、実店舗にあるものをそのまま再現したのですが、ひとつだけ違うのは壁の中をくり抜いて、向こう側が見えるようにしたところです。執務スペースから研修の様子が分かるし、中で研修している新人からも執務スペースが見える。
ここにもオープンなつくりを取り入れ、コミュニケーションを促すことにしました。
‟オープン”というカルチャーを具現化したと。卓球台やバーカウンターを置いたねらいは何ですか?
機能性と遊び心を兼ね備えたインテリアとして、GAFAのオフィスのようにオフィスに卓球台を置いてみたんです。生地や型紙を広げるための大型テーブルとしても便利なんですよ。
このバーカウンターも飾りではなく、本物のバーとして使っていて。毎週金曜の夜に開店するんです。社員が有志で店長となって運営、経費は会社が負担します。近くの店舗スタッフも営業終了後にフラッと寄ってくれたり。「DOT5(ドットファイブ)」という店名とロゴは、旧渋谷オフィス時代に社員がよく通っていたカフェ&バーのオーナーさんから譲ってもらいました(笑)
こんなところでも本社と店舗スタッフの交流が生まれているわけですね。その他にも工夫した点があれば聞かせてください。
私たちが「アリーナ」と呼んでいる階段状ベンチがオフィスの奥にあるのですが、この下が巨大な収納スペースになっています。何を収納しているかというと、大量のパイプ椅子。週1回の全社定例会議のとき、オフィスに100名以上の全社員が集まるからです。
最近は毎月約10%ずつ社員が増えており、放っておくと新旧社員間の情報格差がどんどん広がってしまいます。だから毎週オフィスに集まって、情報を共有しているんです。創業時から続けているこの全社会議も、当社には欠かせない重要なカルチャーのひとつですね。
事業戦略と組織戦略に紐付けた
オフィスづくり
これからオフィスを構えようとする次世代の起業家に対して、オフィスづくりのアドバイスをお願いします。
他社のオシャレなオフィスを模倣することは簡単。そうではなく、自社の事業戦略と組織戦略に紐付けたオフィスづくりをおすすめします。
いま当社は業績好調ですが、景気やトレンドが変われば下降する可能性だってある。そのときに困難を乗り越える原動力こそ、組織文化に他ならない。ビジョンやミッションを掲げることも大切ですが、一番はカルチャーが強く根付いていること。そうしたら、「このチームで一緒に困難を乗り越えたい。もっと大きく成長したい」とメンバーが思ってくれるはず。そして、カルチャーはオフィスを通じて伝えられることだと思うんです。
オフィスって経営のメッセージなんですよ。企業規模が大きくなると、経営陣と社員が毎日コミュニケーションを取ることは難しい。だから、大切にしたい価値観をオフィスで表現すべきだと考えています。当社にとっては“オープン”であること。意識しなくとも社員は日々メッセージを感じとり、その積み重ねがカルチャーを醸成するでしょう。
オフィスは経営のメッセージだと。一方、世間ではリモートワークなどオフィスに縛られない働き方も主流になってきていますよね。
リモートワークの一部導入は良いと思いますが、主流になることには反対ですね。仕事を頼む側からすると、リモートワークは外注するのとなんら変わらない。そうなると、必然的に国内よりコストのかからない海外へ仕事が流れる。その結果、自社の競争力を低下させてしまうことにならないでしょうか?
世界がフラット化した現代において、企業の競争優位性となるのはスピードや実行力であって、事業アイデアそのものではない。だから、事業アイデアを実現できる有能な人材がオフィスに集まり、ディスカッションを重ねることが何より大切だと思うんです。そこでカルチャーを根づかせ、スピーディーに事業を推進していく。当社がここまで成長できた理由も、この点が大きいと考えています。
では、今後もオフィスの重要性は変わらないとお考えですか?
むしろ重要性が高まるでしょうね。コミュニケーションツールの進化に反比例して、情報がクローズになっていく感覚があるんです。Face to faceのコミュニケーションこそ最も有益だと。 だからこそ、今回の‟オープン”なオフィスづくりには力を入れました。大きな投資をした分、得られた効果も既に多くの面で実感しています。まだ移転して数ヵ月ですが、私も社員もこのオフィスをとっても気に入っているんですよ。自宅よりもくつろげるくらいに(笑) この場所でさらなる飛躍をとげて、FABRIC TOKYOの新たな歴史を刻んでいきたいですね。
※取材・撮影内容は、2019年8月のものです。
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