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ディープテック・スタートアップが日本の命運を握る。

ディープテック・スタートアップが

日本の命運を握る。

東京大学100%出資の

ベンチャーキャピタルが見据える未来

ベンチャーキャピタルが

見据える未来

東京大学協創プラットフォーム開発株式会社

AOI1号 CIO

水本尚宏

@

GROWTH

文京飯田橋

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東京大学協創プラットフォーム開発株式会社

AOI1号 CIO

水本尚宏

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GROWTH

文京飯田橋

東京大学協創プラットフォーム開発株式会社 AOI1号 CIO 水本尚宏

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INTRODUCTION

日本の国際競争力強化のカギを握る、アカデミア発スタートアップ。なかでも日本トップの国立大学である東京大学から生まれるスタートアップは、世界に大きなイノベーションを起こす可能性を秘めています。

東京大学協創プラットフォーム開発株式会社(東大IPC)は、「投資」「起業支援」「人材支援」の3事業で、大学をはじめとするアカデミアが持つSeedsの社会実装を目指すベンチャーキャピタル。今回はCIOの水本尚宏(たかひろ)氏に、ディープテック・スタートアップの現状や東大IPCの挑戦についてお話を伺いました。

#1 東大IPCとは?

日本経済再生を使命に設立されたベンチャーキャピタル

インタビューイメージ01

まずは東大IPCの設立経緯を教えてください。

東大IPCは、文部科学省の「官民イノベーションプログラム」により生まれたベンチャーキャピタル(以下:VC)です。日本経済再生に向けた緊急経済対策が2013年1月に閣議決定され、東北・東京・京都・大阪の4つの国立大学法人に対して合計1,000億円が国から出資されました。そのうち417億円が東京大学に割り当てられ、初の東大100%資本のVCとして設立されたのが当社です。

理系に強い国立大学発スタートアップの創出・育成は、日本の国際競争力を高める上でも、深刻な社会課題を解決していく上でも非常に重要。なかでも東京大学が担う役割は大きいものであると考えています。東大IPCは、東京大学をはじめとする大学、アカデミアが持つSeedsの社会実装という使命のもと、国と連携しながら事業を進めています。

水本さんは、設立翌年の2017年に東大IPCにジョインされていますね。その経緯をお聞かせください。

以前は大和SMBCキャピタル(現:大和企業投資)でスタートアップ投資、昭和シェル石油で事業開発に携わっていました。事業会社での仕事はひと通り経験できたので、VC業界に戻ることを検討していたところ、ちょうどその頃に設立されたのが東大IPC。まだ会社のホームページもない創業初期でした。

私には「VCで働いた経験」と「事業会社で事業をつくった経験」がある。次はそれらを融合させて「VCを企画してつくっていく経験」ができたらおもしろいのではないか。そう思ったことが入社の決め手です。私は3人目の社員として、ファンドの組成や起業支援プログラムの立ち上げなどを経験させてもらいました。

インタビューイメージ02

東大IPCには3つのファンドがありますが、それぞれどんな投資活動を行っていますか?

1つ目の「協創1号ファンド」(協創プラットフォーム開発1号投資事業有限責任組合)は、東大関連スタートアップへの投資を行っています。投資対象は主にミドル・レイターステージ。私の投資先企業ですと、先日上場したアストロスケールホールディングス(宇宙ごみ除去)、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが投資したことで注目されたTelexistence(AI×遠隔操作ロボット)、アリヴェクシス(AI創薬)などの実績があります。

2つ目の「AOI1号ファンド」(オープンイノベーション推進1号投資事業有限責任組合)は、私が企画から携わりCIOを務めるファンド。大企業が事業部や子会社を切り出して設立するカーブアウトベンチャーや、シードステージのスタートアップなど、「これからつくる会社」に投資するファンドです。デジタルホールディングスからのカーブアウトで生まれたSIGNATE(デジタル人材教育SaaS)や、シードならCitadel AI(AI品質自動モニタリング)などに投資しています。

3つ目の「ASAファンド」(大学発スタートアップ等促進ファンド投資事業有限責任組合)は、大学発ディープテック・スタートアップに投資するファンドへの出資を目的に、2024年4月に組成した新しいファンド。カーボンニュートラル領域に特化したVCファンドへの出資を決定するなど、すでに動き始めています。

先ほど「起業支援プログラムの立ち上げ」というお話がありましたが、具体的にはどのような取り組みを行っていますか?

起業支援プログラム『1stRound』は、私が2017年に立ち上げたもの。外部からの資金調達前のチーム、あるいは設立3年以内のスタートアップを対象に、理想的な初回資金調達を支援するプログラムです。年2回実施しており、採択されると最大1,000万円のNon-Equity(株式取得をともなわない)資金の提供、専門家による6か月間のハンズオン支援など、充実のサポートが受けられます。

2017年当時、大企業主催のアクセラレーションプログラムが急増していたのですが、スタートアップ側は個別に応募しなければならず非効率な状況でした。そこで東大IPCが中心となって大企業を集め、合同で実施してはどうかと考えたのが始まりです。東大のSeedsだけに限定する必要はないので、他の大学も巻き込むことになり、現在では22企業・19の大学・研究機関が参加。海外企業や大学との連携もすでに視野に入れています。

プログラムの開始以来、有望なスタートアップを多数輩出してきました。『1stRound』で採択され、のちにAOI1号ファンドが投資させていただいたスタートアップも、10社以上となりました。通常の投資とは異なり、プログラムを通じて事前に起業家と接点が持てるため、私たちとしても投資のための判断材料を多く得られる。お互いにメリットの大きいプログラムだと感じています。

大学発スタートアップを創出・育成する“エコシステム”がうまく回ってきているということですね。

そう思います。その他の取り組みですと、『DeepTech Dive』という求人マッチングプラットフォームの運営も行っています。これは東大IPCの投資先・支援先スタートアップと、そこに興味のある人材をつなぐクローズドのデータベース。登録いただいているユーザーはスキルもキャリアも優秀な方が多く、最近はインターン希望の学生さんが増えるなどユーザー層も広がっています。

スタートアップに最も必要な支援は「人材支援」。そんな課題感から『DeepTech Dive』は生まれました。今後は大学のSeedsを活用して、起業を志している方とのマッチングも強化したいと考えており、エコシステム拡大の一翼を担う取り組みとしてさらに活性化させていきます。

#2 GROWTH文京飯田橋での
スタートアップ支援

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#2 GROWTH文京飯田橋でのスタートアップ支援

ゆくゆくはこの場所を「ディープテックの拠点」に

インタビューイメージ03

2024年6月、住友不動産が提供するインキュベーションオフィスと連携し、『1stRound BASE in GROWTH文京飯田橋』をオープンしました。その理由と経緯をお聞かせください。

私たちは以前から、投資先の企業を支援するにあたり、彼らの活動拠点をつくりたいという思いを持っていました。そこでまず2023年に東大前に1拠点目をオープンしたのですが、ありがたいことに一瞬で入居枠が埋まってしまいまして…。そんなときにタイミングよく『GROWTH文京飯田橋』との連携のお話をいただき、2拠点目としてオープンすることになりました。

まだオープンして間もないですが、働き心地などはいかがですか?

『1stRound BASE in GROWTH文京飯田橋』は、オフィスに加えて広々としたラウンジスペースなどがあり、とても充実した空間だと思います。ラウンジスペースでは住友不動産主催のイベントが定期的に開催されており、テーマごとに入居企業と外部参加者を集めたランチ交流会などが行われています。非常に活気があっていいですね。

『GROWTH文京飯田橋』は、文京区なども参画する産学公連携インキュベーションオフィスです。今後さまざまな取り組みが実施できればいいなと考えています。

これから挑戦したい取り組みや、期待することがあれば教えてください。

スタートアップが自社のプロダクトをオフィス内に実装して、「実証実験の場」として活用できるようになればいいですね。現在はワイヤレス給電ソリューションを使った空調設備の効率化や、特殊冷凍テクノロジーを使った無添加おにぎりの販売などがスタートしていて、今後もいろいろと増やしていければいいなと思っています。

この取り組みのメリットは、スタートアップがプロダクトを検証できることだけではありません。インキュベーションオフィスで重要なのは、日頃のコミュニケーションが自然発生する環境づくり。特にここの入居企業は業種がさまざまなので、共通の話題がなかなか見つからないという声もあります。オフィスにこうしたプロダクトがあることで、会話のきっかけにもなるのでは、と期待しています。

インタビューイメージ04

飯田橋というエリアにはどんな印象を持っていますか?

都内ならどこでも30分程度で行けて、東大にも近い。繁華街の神楽坂も徒歩圏内。ほぼ完璧と言っていい立地ではないでしょうか。

個人的に思っているのは、飯田橋が「ディープテックの拠点」になればいいなということ。都内では大学が多く集積する地区のひとつで、さらに飯田橋駅周辺は再開発計画が進んでいるとのことなので、ディープテックのスタートアップやVCが今以上に集まってくることを期待したいですね。その中心的存在としてこのインキュベーションオフィスが機能してくれれば、私たちの目指すスタートアップ・エコシステムはより一層拡大していくのではないかと思います。

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#1 東大IPCとは?

#3 これから実現
したい未来

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#3 これから実現したい未来

大学発、そして大企業発のディープテック・スタートアップを日本から世界へ

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東大IPCの今後のビジョンをお聞かせください。

先ほどお話ししたように、東大IPCでは今年ASAファンドを組成しました。このファンドは、いわゆるファンド・オブ・ファンズ(複数のファンドに投資するファンド)で、まずはASAファンドを通じて私たちの力で民間VCの立ち上げを支援していくことが目下のミッション。私たち官民ファンドは、民間のVCやスタートアップが発展するための発射台のような役割だと思っているので、日本のディープテック界の発展に向けて精力的に投資していきたいと考えています。

また、ファンド・オブ・ファンズとして価値を発揮するためには、私たち自身も成長していかなければなりません。「日本のディープテックの投資家といえば東大IPC」と第一想起していただけるように、投資事業にもより一層力を入れていきます。

AOI1号ファンドのCIOとしては、今後どんなことに注力していきたいと考えていますか?

カーブアウトへの投資件数を増やしていきたいですね。ファンド組成当時、カーブアウトという経営手法はまだあまり知られていませんでしたが、近年は経済産業省の主導で活用が推進されてきているので、この追い風を受けて私たちも今まで以上に注力していくつもりです。

IT市場のホワイトスペースがほぼ埋まってきている昨今、日本からグローバルなスタートアップが生まれるとすればディープテックの領域がカギになるでしょう。そしてディープテック・スタートアップを生み出すためには、大学および大企業の貢献が必要不可欠だと思います。今後カーブアウトを通じて、“大学発”と同じくらい“大企業発”のディープテック・スタートアップを増やすことができれば、日本は世界に勝負できると考えています。

インタビューイメージ06

ディープテック・スタートアップの創出・育成にあたり、課題に感じていることはありますか?

まず共通している課題は、ディープテックには「巨額の資金」が必要であるということ。近年は国からの助成金が拡大しており、VCの投資トレンドもディープテックのシェアが拡大してきているので、非常にいい傾向だと感じています。

“大学発”と“大企業発”、それぞれの課題も教えてください。

“大学発”スタートアップの場合、「起業の担い手が少ない」という大きな課題があります。“大学発”の場合、起業家には教授との相性や技術への知見など、通常にはあまりない特殊な要素が求められるため、担い手が少ないのが現状。一般的には大企業の研究職出身の方やプロジェクトリーダーを経験された方が担う例が多いのですが、そもそも大企業を辞めてスタートアップに身を置くという点については大きな覚悟が必要です。しかしながら、人材の流動性は徐々に高まってきているので、当社も『DeepTech Dive』でのマッチングなどを通じて、担い手不足という課題の解消に努めていきたいと思います。

一方で“大企業発”スタートアップの場合、「カーブアウトの事例がまだまだ少ない」ことが実行のハードルになっています。そのため、私たちが成功事例を増やし、カーブアウトを検討している企業が「東大IPCに相談してみよう」と思える仕組みをつくる必要があります。近々相談窓口を設置する予定ですので、大企業が一歩踏み出すきっかけになればと思っています。

日本発グローバル・スタートアップの育成に向けて、ディープテックの中でも特に期待できる領域はありますか?

すでに世界と戦えていると思うのは「宇宙」。宇宙産業はどの国でもできるわけではないので、そもそも日本には優位性がありますし、技術活用の裾野も広がっています。日本の本来の強みである「自動車」も、今後の発展に期待したいところです。

「AI」については、キャラクターやアニメなどのIP(知的財産)と掛け合わせた「IP×AI」領域は可能性があるでしょう。また、当社の投資先のCitadel AIはBSI(英国規格協会)に製品が採用されるという快挙を遂げており、グローバルでの発展に期待しています。

いずれにしても、日本が世界で戦うには「ハード」、つまり「モノ屋さん」が有利だと思います。コンサルテーションが不要であれば、言語や文化の壁は関係なくなるからです。この先、また新しいホワイトスペースが生まれてくるはずなので、アカデミアの技術を最大限に活かしながらディープテックの発展に貢献していけたらと思っています。

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#2 GROWTH文京飯田橋での
スタートアップ支援

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