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The Voice of GROWTH グロースの声

! GROWTH

(グロース)とは?

席貸しから個室までフレキシブルにご利用可能な、住友不動産が提供する
家具付きインキュベーションオフィスシリーズです。

視覚障がい者の歩行をサポート。

「その人にとっての大きな一歩」を応援する

新発想デバイスで世界に挑む

視覚障がい者の歩行をサポート。

「その人にとっての大きな一歩」

を応援する新発想デバイスで

世界に挑む

株式会社Ashirase

代表取締役

千野歩氏

@

GROWTH

虎ノ門

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株式会社Ashirase

代表取締役

千野歩氏

@

GROWTH

虎ノ門

株式会社Ashirase 代表取締役 千野歩氏

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INTRODUCTION

視覚障がいを持つ方の歩行をサポートするナビゲーションデバイス『あしらせ』。靴に取りつけ、アプリで目的地を設定することで、振動が足に伝わり道案内をしてくれるプロダクトです。

開発企業の株式会社Ashiraseは、2021年にHondaの新事業創出プログラムから生まれたスタートアップ。代表取締役の千野歩(ちのわたる)氏を中心に技術開発に取り組み、2024年10月には量産化を実現しました。そんな同社のこれまでの道のりと、事業・組織の展望に迫ります。

#1 起業ストーリー

多くのユーザーの声をつなぎ合わせて開発した、新発想プロダクト『あしらせ』

インタビューイメージ01

『あしらせ』は靴装着型の振動ナビゲーションデバイスとのことですが、具体的にどのようなプロダクトですか?

視覚障がいのある方が目的地まで安全に、かつ安心して歩けるようにサポートするデバイスです。同じく歩行をサポートする白杖や盲導犬は、主に安全確認の役割を担うため、目的地までのルート確認はスマホの音声案内などを利用するケースが増えています。しかし、視覚障がいのある方にとって「音」は世界とのインターフェイス。音声案内に気を取られて周囲の音を察知できない…ということが課題としてあるんです。

その点『あしらせ』は、足もとへの振動でルートを教える仕組みなので、聴覚での安全確認に集中できるのがメリット。白杖や盲導犬と併用いただくことで、スムーズな歩行を実現します。

プロダクトイメージ

2023年のリリース以降、緻密に改良を重ねられていますよね。どのように進化していったのでしょう。

そうですね。2023年にクラウドファンディングを通じて初期モデルをリリースし、2024年10月に一般販売を開始するまで、さまざまな改良をしてきました。すべては「視覚障がい者の方が少しでも使いやすいように」との思いからです。

スマホのアプリケーション側のアップデートは1〜2週間に1回のペースで行い、自分の歩きやすいルートを作成する機能や生成AIを活用した機能を導入してきました。ハードウェアに関しては、サイズを15%小さくしたり、角を丸くしたり、位置情報を収集するセンサーを追加したりと大幅に改良しました。オプションのカバーもより洗練されたカラー展開に。僕のお気に入りはこのブルーグレーです。

インタビューイメージ02

くすみカラーがお洒落で靴に馴染みますね。千野さんがそもそも『あしらせ』を開発しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

2018年に、目の不自由な義祖母が歩行中に川に落ちて亡くなってしまうという事故がありました。当時は本田技術研究所でEVや自動運転の制御システムの研究開発に携わっていて、それまで起業なんて考えたこともなかったのですが、義祖母の件がきっかけとなり、「視覚障がい者の歩行をサポートするプロダクトをつくれないか」と強く思い立ったんです。

その年に社内の新事業創出プログラム『IGNITION』に応募したのですが、その際は事業化の採択には至りませんでした。仕方なくその後も引き続き個人で開発していたところ、2年くらい経ったときに、『IGNITION』のルールと方向性が大きく変わりました。以前は「社内の新規事業」という前提でしたが、社会課題を解決する事業で「起業」することを前提としたプログラムに変わったんです。新しいプログラムをつくった方から「挑戦してみないか」と声をかけていただき、すぐに応募。晴れて事業化の採択が決まり、2021年にAshiraseを設立する運びとなりました。

新事業創出プログラムで採択された当時は、3Dプリンタで試作品をつくっていたような段階だったのですが、Ashiraseの設立後はソフトウェア部分や製品化を見据えた設計開発をスタートし、現在は30人弱の組織で事業を進めています。僕のやろうとしていることに興味を持ってくれる人が少しずつ集まってくれている感じですね。

靴に装着するというアイデアはどのように発想したのですか?

視覚障がいのある方々に何度もお話を伺い、ベストな形を模索していきました。たとえば腰に装着する形だと、着脱が大変ですし外出時につけ忘れてしまう可能性があります。白杖への装着も検討しましたが、「白杖は私たちの目だから邪魔されたら困る」とお叱りを受けたことも。その点、靴は振動を感じやすく、つけたままにしておけるから生活行動を変えずに利用できる。そうした理由から「靴装着型」を採用することにしました。

2021年の会社設立から現在までを振り返って、一番大変だったことは何ですか?

2023年に初期モデルのクラウドファンディングを実施した際、ユーザーの満足度が高ければそのまま一般販売に移行しようと工場や投資家の方々と話していました。ところが、ユーザーの実際の満足度は20〜30%と想定外に低かった。加えてハードウェアの故障も発生し、一般販売はおろか、すでに販売した150台をすべて回収して社員総出で修理するという事態に陥りました。

結果的に、初期モデルの量産はせずに改良するという意思決定をしたのですが、工場や投資家の方々に何度もご説明し、ユーザーの方のご意見を伺いながらプロダクトの改良を行い…。Honda発のスタートアップということで大きな期待を寄せていただく中、各方面の問題解決に向けて動いていたあの時期は、今振り返っても大変でしたね。でもそれを乗り越えたおかげでプロダクトの価値を高めることができたので、必要な試練だったと思っています。

#2 GROWTH虎ノ門での
働き方

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#2 GROWTH虎ノ門での働き方

資金調達、採用、プロダクト開発…多方面にメリットの多い立地

インタビューイメージ03

2023年に『GROWTH虎ノ門』に移転した経緯をお聞かせください。

当社に投資いただいているUntroD Capital Japanの永田社長が住友不動産の方と昔からの知り合いだったことなど、いくつかのご縁がきっかけで紹介いただきました。以前は墨田区のインキュベーションオフィスにいたのですが、人数が増えてきたため移転を検討していたんです。以前のオフィスと比べてサイズが2〜3倍になるので、そこまでの投資が本当に必要か悩みましたが、立地や広さや家具つきであることを考えるとコスパはかなり高い。今は移転してよかったと思っています。

実際に入居して、どんな点に魅力を感じていますか?

まず、銀行や投資家とお会いする際のアクセスが抜群によくなりました。僕たちのプロダクトは資料だけだとわかりにくい面があり、実際に見ていただくことで一気に話が進むケースが多いんです。最初から対面でお話しすることを重視しているので、虎ノ門という立地のよさは大きなメリットです。採用においても有利だと感じますね。

また、プロダクト開発上のメリットもあります。『あしらせ』はGPSの精度が重要。GPSがずれていても視覚障がい者はなかなか気づけないため、そのまま情報を信じて迷ってしまったりする恐れがあるからです。高い建物の多い都心のほうがより厳しい条件でテストできるので、このあたりのエリアはうってつけ。ハードウェアのメーカーは地方に大きい倉庫が必要な場合が多いですが、僕たちはオフィスに保管できるサイズですから、都心にいるデメリットはないですね。

プロダクト開発にもメリットがあるのはいいですね。社員のみなさんは日々オフィスでどんな働き方をしているのでしょう。

働き方はほぼ社員に委ねているので、人それぞれですね。ビジネスサイドのメンバーは出社率が高いですが、エンジニアは「週2日はひとりでコードを書きたい」みたいな傾向があるので個人に任せていますし、地方在住のメンバーはリモートワークです。

自由度は高いですが、アーリー期のスタートアップなので業務量は多いと思います。特に僕たち経営陣は今後の“グロース”に向けて踏ん張りどき。急な対応やスピード感ある対応が必要になるので、その点、このオフィスは24時間出入りできるところもありがたいですね。

インタビューイメージ04

他の入居企業との交流はありますか?

入居時に同じフロアの6社くらいで交流会を開いていただき、それがきっかけで今もよく雑談や相談をさせていただいています。さっき話に出た、当社に投資いただいているUntroDも同じビルの別のフロアに入居しているので、何かあればすぐに会えるところがいいですね。

『GROWTH虎ノ門』は他社との距離感がちょうどいいと感じています。1フロアの入居社数が多すぎないし、ビル全体がインキュベーションオフィスというわけではないのでスタートアップ以外も入居しているんです。雰囲気の違う会社さんとすれ違うこともあって新鮮です。

2024年10月に開催された『住友不動産 ベンチャーサミット 2024』では、ピッチコンテストで優勝されましたね。

投資家経由でお話をいただいて参加したのですが、想像以上に大きいイベントで驚きました。ちょうど『あしらせ』の一般販売に際して露出を増やそうとしていたタイミングだったので感謝しています。ピッチで優勝と特別賞をいただいたことで、スポンサー企業から賞品や投資交渉権をいただいたり、後日投資家の方から「ピッチ見てましたよ」と言っていただいたり…。住友不動産さんの前で言うのもなんですが、次へつながる貴重な機会をいただけてとてもありがたかったと思っています。

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#1 起業ストーリー

#3 事業と組織のこれから

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#3 事業と組織のこれから

国内外で実績をつくり、社会課題に挑むスタートアップのロールモデルに

インタビューイメージ05

2024年8〜9月にパリで『あしらせ』体験ブースを出展するなど、海外展開も見据えていらっしゃると思います。今後の展望をお聞かせください。

直近の目標は、ここから事業を“グロース”させていくこと。障がい福祉という領域は国境を越えた課題共通性があるので、2025年は『あしらせ』の海外展開を本格化させたいと思っています。僕はパリの出展には行けなかったのですが、視覚障がいのあるスポーツ選手やその組織の方が来てくださったり、視覚障がいだけでなく車椅子ユーザーの方が体験してくださったり、いろんな方に興味を持っていただけました。まずは市場やネットワークなどを考慮してスペインとイギリスを目標にしていますが、フランスやドイツ、その他の国への展開も視野に入れています。

『あしらせ』以外に技術やビジネスを広げていく、という道も検討しています。UntroDの永田さんの言葉でとても共感しているのが「売上を上げれば上げるほど社会がよくなる」。それを体現できる企業にしていきたいといつも思っています。

技術やビジネスを広げていくにあたっては、障がい福祉を軸にするのか、あるいは技術にフォーカスするのか、どんな方向性で考えていますか?

ひとつは、「視覚障がい」をコアに置くこと。課題の多い領域なので、当社がアカウントを持ってそこからさまざまなサービスを派生させていくという方法も可能です。たとえば「引っ越し」に着目するなら、視覚障がいのある方の引っ越しが楽になるようなサービスを他社と連携して展開していく。サービスの満足度が高ければ使い続けてもらえて、展開次第ではLTV向上も見込めるため、事業の広がりとしては有望だと考えています。

もうひとつは、当社が持つユニークな技術の応用。たとえばルート作成技術は、段差の情報を集約することで車椅子ユーザーや配送ロボット向けのナビゲーションに使えるかもしれない。振動で道案内をするという技術は、自転車に乗る人や外国人観光客にも使ってもらえるかもしれない。将来的にリソースを投資できるタイミングが来たら、挑戦したい分野です。

インタビューイメージ05

組織づくりに関して、今後の展望があればお聞かせください。

そうですね…。組織論って正解がないので、今の段階からガチガチに考えるよりは、大きな問題が生じたときに対処しながらナレッジを蓄積していくほうがいいかなと思っています。社員数は今後増えていくと思いますが、人を増やせば売上が上がるという事業ではありませんから、「必要なところに必要な人材を採用する」というスタンスで組織をつくっていきたいです。

実は、会社を設立してから3年半、自分から辞めた社員はひとりもいないんです。僕は社員に干渉するタイプではなく、「ビジョンに強くコミットしてほしい」とも思っていないのですが、それでもそういう状況をつくれていることは嬉しいです。自らの興味関心を突き詰めて、それぞれのプロフェッショナリズムを持って、全員が僕よりも代表っぽく振る舞うような組織になってくれればいいなと思いますね。

大変なことも多いスタートアップで、自分から辞めた社員がいないのはすごいことだと思います。その理由はどこにあるとお考えですか?

「自分たちのやっていることに間違いなく意味がある」と実感できる場面が多いことでしょうか。『あしらせ』を使って悩みや課題から解放されたという声を直に聞けることは、僕たちのモチベーションになります。

自分の歩きやすいルートを作成する「マイルート機能」を追加した際、ユーザーの方からこんな声をいただきました。今までは旦那さんに家事を任せきりで負い目を感じていたけれど、自宅からゴミ捨て場への道をマイルートに登録したことで、ゴミ捨てを「自分の仕事」にすることができた、と。新しい場所や旅行に出かけるのをサポートすることだけが『あしらせ』の役割ではなくて、「その人にとっての大きな一歩」を応援できるプロダクトでありたい。そう改めて思わせていただきましたし、社員にとっても自分たちの仕事の意義を実感できた瞬間だったと思います。

視覚障がいやハードウェアテックという市場はシビアではありますが、僕たちがこの先きちんと実績を出していくことで、社会課題に取り組むスタートアップが増えたら…という期待もあります。難しいことを楽しめる僕の性格はわりと稀有なのではないかと思うので、引き続きその姿勢で頑張っていきたいです。

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#2 GROWTH虎ノ門での
働き方

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