お問い合わせの方は、下記の個人情報保護方針をご確認・同意の上、
メールにてお問い合せをお願いいたします。

個人情報保護方針

The Voice of GROWTH グロースの声

! GROWTH

(グロース)とは?

席貸しから個室までフレキシブルにご利用可能な、住友不動産が提供する
家具付きインキュベーションオフィスシリーズです。

エンタメから言語の壁をなくしたら、

世界が平和になる。

東大AI研究者が選んだ起業への道

エンタメから言語の

壁をなくしたら、

世界が平和になる。

東大AI研究者が選んだ起業への道

Mantra株式会社

代表取締役

石渡祥之佑氏

@

GROWTH

文京飯田橋

07

Mantra株式会社

代表取締役

石渡祥之佑氏

@

GROWTH

文京飯田橋

株式会社eiicon 代表取締役 石渡祥之佑氏

07

INTRODUCTION

日本が誇るエンタメ「マンガ」。その魅力を世界中の人たちに届けるために、独自のAI技術で多言語翻訳を実現しているのが、Mantra(マントラ)株式会社です。

代表取締役の石渡祥之佑氏は、東京大学大学院在学中にマンガ機械翻訳システムの開発を開始。2020年に会社を設立して事業拡大を続け、2024年には『GROWTH文京飯田橋』に移転して新たなスタートを切りました。今回はそんな同社のヒストリーと今後の展望に迫ります。

#1 起業ストーリー

エンタメから言語の壁をなくしたい

インタビューイメージ01

現在展開している『Mantra Engine』『Langaku』の2つのサービスについて、概要を教えてください。

『Mantra Engine』は、マンガに特化した独自の機械翻訳技術を活用した法人向けクラウドサービスです。このサービスは、従来ゼロベースで人間がしていた翻訳作業を一定レベルまでAIに作業させ、最終確認を人間が行う、というプロセスにシフトすることで大幅な業務効率改善を実現します。すでに多数の出版社やマンガ配信サービス会社、翻訳会社などに導入いただいています。

そのAI技術を英語学習に転用したサービスが『Langaku』。マンガを英語で読みながら言語を習得したい方を支える、個人向けのスマホアプリです。

僕たちの事業の根底にあるのは「エンタメから言語の壁をなくしたい」という思い。マンガを世界へ流通させるために“言語の壁”を『Mantra Engine』でなくし、読者一人ひとりの“言語の壁”を『Langaku』でなくしていく。そうした目的で2つのサービスを展開しています。

「エンタメから言語の壁をなくしたい」と思うようになったきっかけをお聞かせいただけますか。

僕は小学生のときに中国に1年間住んでいました。学校で外国人は僕だけ、という環境でしたが、共通の話題がたくさんあったおかげでクラスメイトとすぐに仲良くなれました。その共通の話題というのが、日本のマンガやアニメだったんです。「エンタメが言語の壁を越えて行き来すると、世界が平和になるんだな」と肌で感じられたことは、僕にとって非常にポジティブな体験でした。

その原体験が、のちの起業につながるのですね。

はい。大学に入った頃は、高校で言語を教える先生になりたいと思っていたのですが、パソコンが大好きだったので大学2年で情報系の学科に転向しました。そこでどんどんコンピュータの魅力にとりつかれ、沼にハマっていきまして…。ただ、この時点ではエンジニアを志していて、 “起業”なんてまったく考えてもいませんでした。

そんな僕が起業したいと思ったのはそのずっとあとの話で、大学院の博士課程3年のとき。あるとき学内の講義で、僕と同じ学科を卒業して起業した先輩がこう話していたんです。「研究者が技術やプロダクトをベースに起業するという道もある。経営に必要な能力は“あとから”身につけていけばいいのだ」と。

それを聞いた瞬間、私の中で何かが変わりました。なるほど、起業という選択肢もあるのか、と…。居ても立っても居られなくなって、同じ研究科だった日並(Mantra共同創業者/CTO)にすぐさま連絡しましたね。いきなり「一緒に起業しよう」だと唐突すぎて警戒されると思ったので、「研究と就活について話そう」と(笑)。ちょうど学内でビジネスコンテストが予定されていたため、自由研究のような感じで二人で応募してみないか、と誘いました。その後、いろいろなアイデアの中から「マンガの機械翻訳」事業に決めて応募したところ、なんと優勝してしまったんです。

インタビューイメージ02

すごいですね。幼い頃の体験とAIの知見がうまく結びついた、石渡さんならではの事業構想ですね。

いえ、当時はあの体験をそこまで意識していたわけではありません。マンガもAIも好きだったので思いついたアイデアのひとつに過ぎず、実現したらおもしろそうだな、という軽い気持ちでした。ところがビジネスコンテストで優勝し、学内のスタートアップ支援プログラムを受けて本格的に「マンガの機械翻訳」に取り組むようになってから、この領域のニーズが想像以上に大きいということを知ったんです。

日本のマンガは海外でも人気ですが、実は正規のルートで翻訳出版されているものは10パーセント程度しかなく、ほとんどは海賊版。対策を講じようにも、従来のやり方では翻訳コストや時間がかかりすぎて追いつかない。出版社や漫画家の方の話を聞いて課題の深刻さを知りました。そんな中で、幼い頃にエンタメを通じて感じたことを思い出し、「エンタメから言語の壁をなくしたい」という思いが僕を突き動かすようになったんです。

マンガに特化した機械翻訳エンジンを開発するにあたり、技術的に難しいポイントはどこでしたか?

いろいろありましたが、たとえば、文字の翻訳だけでなく画像の処理も同時にしなければいけない点ですね。

出版社や翻訳会社が持っているマンガのデータの多くは、文字情報と画像情報が分かれていません。そのため、①原稿の文字情報をAIで読み取って翻訳し、②読み取った後の文字情報だけを消し、③その上に翻訳した言語の文字情報をのせる、という3つの工程を自動で行う必要があります。そのため僕たちは、「画像認識」と「自然言語処理」の2つのAI技術を組み合わせてエンジンを構築しました。

また、マンガの世界には単純な文字翻訳だけでは対応できない“空気”があるので、それをAIに認識させる難しさも。たとえば、会話の中で主語や目的語が省略されていても正しく翻訳できるようにしたり、キャラクターの表情によって言い回しを変えられるようにしたり。効果音や方言などの翻訳も、その作品らしさにつながる部分なので重視しているポイントです。

AIの進化にともない、自動化できることもどんどん増えていきそうですね。開発当初と比べて大きく変わった点はありますか?

やっぱり大規模言語モデル(LLM)が出てきたことですね。わかりやすく言うと、これまでの翻訳エンジンは「原文を入れたら訳文が出てくる」というもので、翻訳精度を上げるためには自分たちでAIを訓練するしかありませんでした。ところがLLMの登場により、「もっと柔らかい口調に」「もっと怒っている感じで」など、翻訳ディレクターが翻訳者に指示するような柔軟なコントロールをある程度自動化できるようになったんです。僕たちも従来のやり方と並行して、すでにLLMを活用しているので、翻訳の品質が大きく向上しました。

もちろん、まだまだ改良が必要な部分もあります。翻訳の品質評価の指標としてよく挙げられるのは「正確性」と「流暢性」ですが、エンタメの翻訳はそれに加えて「おもしろさ」が必須。エンタメとして楽しめるレベルの、いわゆる“ケレン味”のある翻訳をAIが完璧にできるようになるまでには、まだいくつものハードルがある。非常に難しいですが、挑戦しがいのある課題だと思っています。

#2 GROWTH文京飯田橋
での新たなスタート

next

#2 GROWTH文京飯田橋での新たなスタート

スタートアップ同士の支え合いが、大きな励みや刺激になる

インタビューイメージ03

『GROWTH文京飯田橋』は、住友不動産が文京区や大学系組織と連携してオープンしたインキュベーションオフィスです。こちらに移転した経緯をお聞かせください。

『GROWTH文京飯田橋』の運営に参画している東京大学100%資本のベンチャーキャピタル、東大IPC(東京大学協創プラットフォーム開発株式会社)からの紹介です。

僕たちは創業前に東大IPCの起業支援プログラム『1stRound』に採択され、会社設立のサポートや資金提供などを受けてきました。現在も月に2回ほど、担当者の方に事業や組織のことを相談させていただいています。これまでは別のベンチャーキャピタルや財団が運営するシェアオフィスを利用してきたのですが、社員数が増えて手狭になったのを機に、こちらに移転しました。

『GROWTH文京飯田橋』の働き心地はいかがですか?

最高です。Mantra専用のオフィススペースの他に、広いシェアスペースがあるのが非常にありがたいですね。ちょっとしたミーティングをするとき、オフィス内だと騒がしくなり他の社員の集中を妨げることもあるので、なるべくシェアスペースに出てオープンな環境で話すようにしています。また、投資家や取引先とのオンラインミーティングの際には、ひとり用のWebブースも重宝しています。

あとは、日当たりがよくて景色がいいところも気に入っています。昔、日光が入らない部屋に長くいたらモチベーションが下がってしまった経験があるので、日当たりのよさは重視していたポイントでした。社員からも「明るいオフィスで快適」「仕事中に窓の外の緑を眺めてリフレッシュできる」と好評です。

インタビューイメージ04

飯田橋というエリアについてはいかがでしょう。

とても便利ですね。実は、以前のオフィスも条件がよかったので移転しない案も出ていたのですが、事業責任者の関野が「飯田橋こそ最強の駅だから移転したほうがいい」と言っていたんです。東西線と南北線が両方通っているということは日本の中心だ、と(笑)。実際、飯田橋駅はどこに行くにもアクセスがいいですし、通勤しやすくなったという社員も多くて、移転してよかったと思っています。

これから他の入居企業との交流やイベントなども増えていくと思います。今後『GROWTH文京飯田橋』でやってみたいことはありますか?

今後、入居企業の交流会があるというお話なので、ぜひ参加してみたいです。たとえ事業領域が違っても、スタートアップ共通の悩みや課題はたくさんあります。これまで入居してきたシェアオフィスでも、同じ時期に入ったスタートアップと同じようなステップで成長していく過程で、お互いに相談し支え合うことがよくありました。

経営者にとっても社員にとっても、同じ境遇の相談相手の存在は大きな励みや刺激になると思うので、『GROWTH文京飯田橋』でもそうした出会いに期待しています。

prev

#1 起業ストーリー

#3 事業と組織のこれから

next

#3 事業と組織のこれから

スタートアップという長期戦に全員で挑み続けるために

インタビューイメージ05

現在はマンガに特化した機械翻訳事業を展開されていますが、他のエンタメ領域に進出する予定はありますか?

はい。子どもの頃に中国で実感した「エンタメが世の中の平和に貢献している」という思いは今も変わらず僕の中にあるので、マンガ以外の機械翻訳にもぜひ挑戦したいと思っています。

すでに着手しているのは、小説の機械翻訳。小説はマンガと比べて文章量が格段に多いため、AIでの翻訳より、そのあとの人手でブラッシュアップする工程に非常に時間がかかります。現在は社内に翻訳チームを設置するなどしてベストな方法を模索しており、ゆくゆくは小説にとどまらず幅広い領域に展開していきたいと考えています。

インタビューイメージ06

事業とともに組織も拡大していくフェーズだと思いますが、組織づくりで大切にしていることはありますか?

「グローバルチーム」であることを常に意識していますね。外国語を話す人も当社では活躍しています。というのも、言語の壁をなくすプロダクトを開発しているのに、日本語話者だけで組織を形成するのは違うかなと。大学院時代に所属していた研究室やインターン先では、「バックグラウンドの異なる人たちが世界中から集まって一緒におもしろい技術をつくっていく」ということがごく当たり前の世界観だったので、会社でも同じような環境をつくりたいと思っています。

研究者出身の石渡さんならではの考え方ですね。では、社員のワークスタイルに関して大切にしていることがあれば教えてください。

コロナ禍でリモートワークが一般的になりましたが、僕個人としては、出社は必要だと考えています。抽象度の高い話題について話すときや丁寧なコミュニケーションが必要な場面では、オフィスに集まって議論したほうが進むと実感しているからです。今日も『Langaku』のメンバーが全員出社して、次はどこに優先的にリソースを割くべきかを議論しています。

一方で、ひとりで黙々と取り組むほうが効率的な業務もある。子育てなどで毎日出社するのが難しい場合もあるでしょう。より優秀な人を採用できる可能性を広げるためにも、リモートワークをなくすことは考えていません。最近は週2日出社と週3日出社をどちらも試して、当社に合うワークスタイルを模索しているところです。

あとは、「健康第一」ですね。スタートアップは気をつけていないと健康が後まわしになりがち。もちろん、集中的にがんばるべき時期はがんばる必要があるのですが、だからこそ休めるときはしっかり休んでもらうようにしています。有休消化率もアーリーステージの会社としては高いのではないでしょうか。

僕たちスタートアップのチャレンジは長期戦。自分の健康、チームの仲間の健康、そして家族の健康を第一に考えて、全員で挑んでいきたいと思います。

prev

#2 GROWTH文京飯田橋
での新たなスタート

SNS公式アカウント
住友不動産の関連サイト